出展者インタビュー Vol.3

こんにちは!
この展示会では、私、松澤が書いた「I love you」の翻訳文(候補は33編)から、それぞれ好きなもの・気になったものなどを選んで各作品のタイトルにしています。
なぜその文を選んだのか、その文を読んでどう感じたのかの2点について、出展メンバーに話を聞いています。

3回目は岩松千紘さん。選んだ文は「悲しいことは、まだ言わないで。」「月よりも、夕陽の射す道が綺麗。」「あなたの隣、わたしの居場所がひとつ。わたしの隣、あなたの居場所がひとつ。」です。


「悲しいことは、まだ言わないで。」

①なぜその文を選んだのですか?

言葉と写真があってはじめて作品と成るこの展示。私が今までに撮り溜めていた写真の中で、この言葉にぴったりな写真があったような…?と思い、選びました。
作品のイメージとしては切なさと美しさがあるような感じ。

②その文を読んでどう感じましたか?

はじめにこの言葉を見た時には、なんて切ない言葉なんだろうと思いました。悲しいこと、と言われたら〝別れ〟とか〝フラれる〟とかそういうものを連想したからです。
できればそういう言葉は聞きたくないし、幸せは永遠に続いてほしいと思うもの。でも、いつかは悲しいことを聞かなければいけない時が来てしまう…
恋をする女の子にある、弱さや辛さを乗り越えようとする強い心が表現された言葉だなと感じました。

また、「悲しいことは」の後にある読点が気になりました。あえてここに読点を付けた意味とはなんだろう?
それを考えた時に、スッと口に出せないもどかしさを表現したのかな、と思いました。


✉松澤より

句読点を置く理由はいくつかありますが、最たるものが「リズム」です。「悲しいことは」のあとで、一度立ち止まる。この文章では、口に出すときに喉に引っかかる感じを大切にしました。

この文章では、私は「未来の不安定さ」をイメージしています。と言っても、これに関しては「あ、なんかこのことばいいな」と思って書いた、いわゆる「降りてきた」文章なので意味は後づけです(笑)
不確定な未来の中での幸せ。まだ悲しい明日は見せないで、幸せな今日に浸らせて、みたいな。なので、「幸せは永遠に続いてほしい」という部分がまさにその通りだな、と思います。

私はそこに「未来から目を逸らす」みたいな意味合いも含んでいたのですが、写真では「乗り越えようとする強い心」が表現されているとのこと。
底にあるものは同じだけれど、表現者によって進む道が変わってくる。それが、この展示会ならではの面白さじゃないかなと思います。私だけでは絶対に作れなかった作品で嬉しいです。海に向かう後ろ姿がかっこいい!


「月よりも、夕陽の射す道が綺麗。」

①なぜその文を選んだのですか?

私自身、1日が終わりそう、ってなるくらいの夕陽や夕焼けが好きでよく写真に撮るんです。
でもその夕陽や夕焼けではなく、あえて“夕陽の射す道”っていうところが面白くて、写真として撮ってみたいと思い選びました。

②その文を読んでどう感じましたか?

夏目漱石が由来とされる「月が綺麗ですね」という有名な言葉がありますが、ここでは「夕陽の射す道が綺麗」と謳っています。
そこに女の子特有の(?)うまく言いたいけど言えない、みたいな気持ちがあるのかな、なんて思いました。本当は「好き!」って言いたいのに、みたいな。
恋って難しい、もどかしい、、、


✉松澤より

確かに!「夕陽」じゃなくて「夕陽の射す道」って、意外性がある部分だったかも、と言われて気づきました(笑)
「月が綺麗ですね」は、一緒に月を見ているから出てくる言葉なのではないかな、と思っています。一緒に月を見るシチュエーションよりも、ぐっと身近なものを探しました。学校からの帰り道、夕陽の射す道を並んで歩くようなイメージで書きました。

岩松さんのこの写真は見ていて胸がぎゅ〜っとなります。なるほど、これは「もどかしさ」だったのか!と納得しました。影の中で瓶の光が揺らいでいて、その「揺らぎ」が心地良いなと思います。


「あなたの隣、わたしの居場所がひとつ。わたしの隣、あなたの居場所がひとつ。」

①なぜその文を選んだのですか?

もうこのタイトルにはこの写真しかない!!と思い、撮り溜めてきた写真から選びました(笑)

②その文を読んでどう感じましたか?

好きな人の隣に居たい、っていうのを素敵な言葉で紡いだのがこの文章だと思いました。
私の妄想(?)では、遠距離恋愛を表現したモノかな、と。好きな人のところまで想いが届くようにタンポポの綿毛をフーッと飛ばしていて。
実際に隣にいることはできないけれど、心は側にいるし、どこに行ってもあなたへの想いや気持ちは変わらない、みたいな。
綿毛ってふわふわしているから儚く見えがちだけど、実は根強い一面もあって。そんなところも恋心と綿毛って似ているなあと思いました。


✉松澤より

ほんとに私も「この写真しかない!!」と思います。めちゃめちゃぴったり。横顔っていうのが「隣」をさらに際立たせていて、見ている側が「あなた」視点になれる写真だな、と思いました。

この文章は何の屈折もなく、そのまんまの意味で書きました。恋と友情、どちらにも捉えられますが、「わたし」にとっても「あなた」にとっても互いが唯一無二である。そんな素敵な関係です。
そこに写真では「遠距離恋愛」という要素が加わっていて、健気でかわいらしくて応援したくなってしまいます。ふわふわがあまりにもかわいい。遠くても「居場所」が成立しているところが素敵だなと思います。


今回は以上です。出展者インタビューも前半が終了しました。
いろいろな発見があり、書いている私自身がいちばん楽しんでいるかもしれません(笑)次回もよろしくお願いします。


松澤まど花

どうか、貴方の恋が叶いませんように。